※お化けとかが出てくるホラー話ではないです。どちらかというとヤバい話。
A社で起こった怖い話。
その時A社では大きなプロジェクトが進められており、海外の本社から多くの人が日本にあるA社に来ていた。
出入りする人数が多い上に数週間から数ヶ月程度で本国へ帰ってしまうので、マンスリーマンションやホテルだと経費が嵩んでしまう。
そのため、会社名義でアパートを借りて寮代わりにしていた。
そんなある日、1人の社員が本国から来日。早速アパートの割り当てられた部屋へ入ると、
人がいた。
驚いて確認するも部屋は間違えていない。
鍵もきちんとかかっていたのになぜ人がいるのか?そもそもこの人は誰なのか?
侵入者の正体はA社の社員(仮にSさんとする)だった。
そのアパートはSさんの部署の庶務さんが鍵を管理しており、合鍵の保管場所を把握していたSさんはこっそりと鍵を持ち出し、アパートに侵入していた。
と、いうより私物を持ち込んで半分住んでいたのだ。
もちろん問題になり、彼は厳重注意された。
しかし、この話はこれだけでは終わらない。
ある日、庶務さんが保管場所にあるはずのアパートの合鍵がないことに気がついた。ついでにSさんもいない。
嫌な予感がした庶務さんはすぐに上司に報告した。上司がアパートに向かうと部屋には鍵がかかっている。
インターフォンを何度も鳴らした後、ようやくドアは開いた。
Sさんだった。
しかも、明らかに寝起き。
改めて補足しておくが、勤務時間中である。もちろん、昼休みでもない。
上司はSさんを連れ帰り事情を聞いた。
彼曰く「部屋の掃除をしていた」とのこと。言い訳にすらなっていない。
実はSさん、以前から仕事中に長時間席を外すことがしばしばあり、周りの人も不審に思っていた。
そう、彼は常習犯だったのだ。
Sさんは再び厳重注意の上、始末書を書かされた。
流石にこれで終わり……ではない。
Sさんの辞書に“常識”という言葉は存在しないのだ。
始末書を書いた時は納得してたはずだが、翌日になると上司に対して怒りが湧いてきたようで(なんで?)アパートを実際に契約している大阪支社に連絡。
なぜか契約内容を担当者に確認。契約内容をどんなに洗い直しても勤務時間中に会社の契約するアパートに不法侵入して寝ていた件はどうにもならないと思うのだが。
当然大阪支社からSさんの上司に連絡が入り、3度目の厳重注意。
しかしSさんは自分の行動に問題はないと言い張るばかりでまったく話にならず。
さらにある日、庶務さんが鍵の保管場所の棚を探るSさんを目撃。庶務さんは数日前に鍵の保管場所を変更していたため、見つからずに済んだ。
するとSさんは庶務さんに堂々と鍵のありかを聞いてきた。
繰り返すが、彼はアパートの管理担当ではない。なのでアパートの合鍵の場所を把握しておく必要は一切ない。
そう、まったく反省していないのだ。どうしてもアパートで寝たいらしい。
それからしばらくしてSさんはとうとうクビになった(形式上は自己都合退職だと思う)
彼はクビになってからも、かつての同僚に連絡を取り、上司の悪口を言い続けているらしい。
会社が契約した他人用のアパートの合鍵を許可なく持ち出し、度々勤務時間中にアパートに侵入しては昼寝をしていたSさん。
どこを切り取っても言い訳のしようのない異常行為だが、Sさんの頭の中ではいったいどのように事実がねじ曲げられていたのだろうか?
私達には知る由もない。
終わり
※この記事はフィクションです。実際の人物・団体とは一切関係ありません。……だったらよかったのにね。